GLASS Question & Answer ガラスQ&A
■Question
医療・理化学用ガラスと普通の窓ガラスや瓶ガラスは、どういった点が違うのでしょうか?
■Answer
医療・理化学用ガラスと窓ガラスなどの普通のガラスとは、まずその組成に大きな違いがあります。表1に代表的なガラスの組成と性質を示します。まず、石英ガラスは、耐熱性、化学的耐久性に優れ、最高の医療・理化学用ガラスとされています。
しかし、これは熔融、成型が困難で、価格が高いという難点があるため、特別な場合以外は、あまり用いられません。そこで、一般的な医療・理化学用ガラスとしては、Na2O-B2O3-SiO2の組成から成るホウケイ酸ガラスが用いられています。これに対して、普通のガラスは、基本的にNa2O-CaO-SiO2の組成から成るソーダ石灰ガラスと呼ばれものが用いられています。両者のガラスとしての性質を比較した場合、普通のガラスはわりあいとアルカリ分が多く、アルカリ溶出量や熱膨張係数が大きいので、急激な温度差を与えると割れたり、熱水で煮沸するとガラスからアルカリ成分が溶け出したりします。一方、ホウケイ酸ガラスは、熱膨張係数が小さいので、熱衝撃温度が高く、酸化ホウ素(B2O3)も多く含んでいるので、化学的にも大変耐久性があります。また、これらは、本来水に侵されにくく、中性であるべきところから“中性ガラス”とも言われています。
医療・分析に用いられるガラスには、化学的に安定していて、耐久性に優れ、中身の薬品に影響のないガラスであることが必須条件です。当社製品は、このホウケイ酸ガラスを使用しております。
■表1 代表的なガラスの組成と性質
削 種 |
組 成(wt%) |
比 重
g/cm3 |
膨 張
係 数
℃-1 |
軟化点
℃ |
用 途 |
SiO2 |
B2O3 |
AI2O3 |
Na2O |
CaO |
その他 |
石英ガラス |
100 |
— |
— |
— |
— |
— |
2.20 |
5×10-7 |
1650 |
特殊 |
ホウケイ酸ガラス |
73.0 |
11.0 |
6.5 |
6.0 |
0.5 |
K2O,BaO |
2.34 |
52×10-7 |
785 |
医理用 |
ソーダ石灰ガラス |
70~73 |
— |
1~1.8 |
13~15 |
7~12 |
MgO |
2.50 |
85×10-7 |
730 |
窓ガラス |
■Question
ホウケイ酸ガラスといっても色々あるのでしょうか?
■Answer
ガラスの種類は組成により分けられており、それぞれ熱膨張係数やアルカリ溶出量が異なります。日本工業規格(JIS R-3503)では化学分析用ガラスをアルカリ溶出量が少なく、熱膨張係数が小さい順に区分がなされています。(表‐2 参照)また、ホウケイ酸ガラスはJR-1とJR-2の2種類に分類されており、分類基準としては熱膨張係数とアルカリ溶出量等が設定されています。JR-1が最も熱膨張係数が小さく、アルカリ溶出量も少ないホウケイ酸ガラスとなります。(熱膨張係数とは耐熱性や耐熱衝撃等を表す基準としてあり、アルカリ溶出量はJIS規格にて定められた試験基準の下で行われる数値基準となります。)日本薬局方でも注射剤用のガラス容器に対する基準が設定されており、一般的に医療向ガラスの材質としてはホウケイ酸ガラス(JR-2)が用いられることが多く、アルカリ溶出基準等を含む化学的安定性の基準や2次加工後の品質が重要視されています。
■表2 JIS R-3503化学分析用ガラス器具 抜粋
等 級 |
ホウケイ酸ガラスー1 |
ホウケイ酸ガラスー2 |
ソーダ石灰ガラス |
記号 |
JR−1 |
JR−2 |
JR−3 |
熱膨張係数 ×10-7/℃ |
35以下 |
55以下 |
95以下 |
アルカリ溶出量(ml/g)
(μg/g) |
0.10以下
31以下 |
0.20以下
62以下 |
2.0以下
620以下 |
■Question
ガラスはなぜ割れるのでしょうか?(機械的性質)
■Answer
ガラスの理論強度は、~1,000kg/mm2であるとされていますが、実際のガラスは、3~5kg/mm2と非常に低くなっています。これは、ガラス表面に微細な傷や割れ目ができるからだと考えられています。つまり、このガラス表面にある小さな割れ目が起点となってガラスが割れるとされるのです。
当社においては少しでもわれの原因となる傷が少なく生産できるように、ワンラインシステムにて成型することで、人の手が触れたり、いろいろな接触があることで起きる傷を最小限に抑えています。成型デザインにおいても、例えば、試験管の底部はできるだけ均一に半円球に成型し、口部はニューリップをラインナップとして加えるなど、ガラスの強度を保つ形状も研究しております。
■Question
ガラスはなぜ透明なの?(光学的性質)
■Answer
人間の目に光として感じる波長範囲は可視域と呼ばれ、個人差があります。その下限は、360~400nm、上限は760~800nmとされています。ガラスは、この可視域の光をほとんど吸収することなく透過させるから透明なのです。また、光がガラス表面に入射する際の反射率が少なく、さらに光がガラスによって散乱されることなく直進できることも、ガラスが透明である理由として挙げられます。
参考に、当社が使用している透明ホウケイ酸ガラス(BC)の透過率曲線を図2に示します。同時に茶色のガラス(BS-AK)の透過率曲線も示します。茶色のガラスの中に、鉄(Fe)イオンを入れ着色しているのは、光を吸収させるためなのです。
■Question
ガラスは薬品に対して強い!?(化学的性質)
■Answer
ガラスの化学的耐久性は、金属などに比べて、確かに優れています。しかし、長期間の使用においては、ごくわずかにガスや液体に浸食されます。一般にガラスは、水や酸に対しては強いが、アルカリ性溶液には弱い材料です。(特例:フッ化水素酸HFは、いかなる温度でもガラスを腐食します。)
ガラスの化学的耐久性を評価する方法として、化学分析用ガラス器具の試験方法(日本工業規格JIS R-3502)や注射剤用ガラス容器試験法(日本薬局方一般試験法)があります。これらの試験方法は、耐水性を評価するもので、ガラスからのアルカリ溶出試験と呼ばれています。もちろん、当社においても、これらの方法で試験を行っております。
ガラスの化学的耐久性向上法として、イオウ化合物との反応を利用したガラス表面の脱アルカリ処理や、ガラス表面への薄膜形成(コーティング)があります。
■Question
ガラスを熱すると伸びるの?(熱的性質)
■Answer
一般にガラスも他の材料と同様に熱を加えると、わずかですが、長さ(体積)が大きくなります。図-3にガラスの温度に対する伸び率を示します。この熱膨張曲線の直線部の傾きが、熱膨張係数と呼ばれるもので、この値の大小によって、熱衝撃に対する強さが決まります。つまり熱膨張が小さなガラスほど、急激な温度変化に耐えられるということになります。(石英ガラス熱膨張係数α=5×10
-7/℃ ホウケイ酸ガラス<当社使用>α=52×10
-7/℃ ガラスコップα=100×10
-7/℃)。熱衝撃の強さのことを耐熱温度という場合があります。
日常生活で、ガラスコップに熱湯を入れてはいけないと言われます。これは、熱湯によって、ガラスコップが熱衝撃を受け、割れる可能性があるからです。つまり、ガラスは、金属に比べ熱伝導率が低く、熱湯を入れることによって、瞬間的ですが内側表面が100℃近くになり伸びようとし、外側は室温のままでその形状を維持しているのです。そして、そこに温度差による応力が働いて、傷があるようなガラスコップは割れてしまうのです。当社の使用しているホウケイ酸ガラスは一般のガラスに比べ、熱衝撃に強い材料ですので熱湯を入れる程度では破損の危険はほとんどありません。しかし、熱いものの急冷は、破損の原因となる恐れがあるのでお気を付け下さい。
■Question
ガラスの歪(ひずみ)について教えて下さい。
■Answer
ガラスの製造あるいは加工時に、ガラスを高温の状態から室温に取り出すと、ガラスの表面は、急激に冷却され固化しますが、その内部は高温の状態のまま残ることになります。内部が遅れて冷却され、収縮しようとする際、固化した表面は体積を保とうとするので、ガラスの内外層に応力(熱衝撃応力)が発生します。このままガラスを放置すると応力は消失せず、ガラス中に永久に残ります。こういう状態のことを、ガラスに歪があると言います。
歪のあるガラスは、遠心分離機にかけたりちょっとしたショックで割れてしまう危険性があります。歪を取り去るには、徐冷を行わなければなりません。つまり、ガラスの表面層と内部層に温度差を生じさせないようゆっくりと冷却することが必要なのです。
歪の検出は、当社の開発した歪検査機を使うことによって簡単にできます。原理は、ガラスの光弾性的性質を利用した偏光発生によるものです。歪の大小は、試料を偏光中に置いた時の濃淡の縞(模様)、あるいは色で観察します。 もちろん当社の製品は全て完全に歪が除かれています。
■Question
分相、フレーク、失透というような言葉をよく聞くのですが、どういう意味ですか?
■Answer
■分相現象とは・・・単一相のガラスが、二つ以上のガラス相に分かれる現象を分相と言います。熱処理や熱加工によってSiO2相に富む相とB2O3-Na2O相とに分相し、分相したガラスは、化学的耐久性が著しく劣化します。硬質1級のガラスでさえ、熱処理が不適当であると極端な場合、耐久性が最低のガラスに変質することがあるので、この系のガラスの熱処理には、十分な注意が必要です。
■フレークとは・・・容器(ガラス瓶等)の液中に一見ガラスの薄片のような透明の針状・ウロコ状の膜片が生成していることがあり、これをフレークと言います。これは、ガラスから可溶性のホウ酸・アルカリ分が溶け出て、残った含水シリカの骨格が膜状となってガラス表面に残り、液がアルカリ性になると次々に剥離してフレークをつくるのです。フレークを生じているガラスは、アルカリ性溶液には弱くなります。
■失透現象とは・・・ガラスを長時間高温で加熱すると、表面または、内部に不透明な箇所を生じることがあります。これは、ガラス中に結晶が析出したもので、この現象を失透と言います。こうした失透現象は、ガラスの液相温度よりやや低い温度に長時間保たれると生じ、これを抑えるためにAl2O3、B2O3などの成分をガラスに加えてあります。